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商品説明
備前焼大鑑/林屋晴三/定価39800円/現代にいたる備前の陶芸の全貌をこの一冊に収める/藤原啓・山本陶秀・金重素山等52人の作家の作品も収録
昭和55年 213P。カラー 定価39800円 27㎝×37cm いわゆる豪華本ですね。 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。
林屋晴三
日本のやきものが今日ほど多くの人々に注目された時代はなかった。ことに現代の陶芸は、作陶 家の数の多いことと、その作域のひろがり、さらに陶芸家の生活水準が高まったことなど、いずれ の面においても日本の陶磁史上かつてない繁栄をみせているといっても過言ではない。
胎土の運搬が極めて容易になり、燃料もかつてのように薪にのみ頼るといった時代ではなく、ガ ス、重油、電気など、まさに燃料革命の時代となり、かつては土と薪に恵まれたところでしか生業 のたたなかった陶芸が、いまでは制作意欲と行動力があれば、いかなるところでも可能になったといえる。しかし一方では、そのために次第に地域的な特色が失なわれ、作家活動も地域的特性に従 いつつ生業を立てる時代は過ぎ去りつつあり、個々の作陶家の創 地であろうと作品を焼造することが可能になって、まさに個人的個性発露の時代が来たったといえよう。
そうした時代的趨勢のなかにあって、地域的特性の濃厚な作品が、いまなお地域に居住している 作陶家だけによって造られているのが備前焼である。伊部の土を運んで、備前地域の外で作陶して いる作家がいないではないだろうが、そういう作陶家は極めて少ない。「土」がもたらす絶対的な ものが備前焼をそのような特異な存在にしているのであろうが、備前焼の作陶家も、備前焼を需め る人達も、備前焼に関してはそうでなければならぬと思いこんでいるように思われる。おそらく伊 部の土を運んで東京で備前焼を焼いたならば、備前の陶芸家はその人物を備前焼の作家とは認めな いのではないだろうか。
「伊部の土は、備前(岡山県)の地で焼造されなければならないという観念が、備前焼に関しては、 まだに強く生きているのであるが、それならば、ま備前で作陶している人々が、その備前ならではの土を、本当に愛し、理解し、土の特性に深く感じて作陶しているかというと、私にはそれほど 美琴る人物は限られた人々であるように思えてならない。というより、他の土地では採れない独特 の主が多たらす味という名のに甘えているといった感を、さまざまの展覧会におもむくたびに感じさせられる。
備前焼のながい歴史を知っている私にとっては、そのように思うことはまことに淋しいことであ る。るろろん備前の陶芸家達はそれなりに努力し、現代における備前焼のありかたを考えてはいる であろう。また、私は土に甘えていると言ったが、反面その土であるがために施釉陶磁の作陶家と はちがった苦労もあるにちがいない。しかし、備前焼の最盛期であった桃山時代の作品と対照して 現代の備前焼を見ると、残念ながら現代の人々は先人はど努力していないように思えてならない。 遠い桃山のことを言わなくても、近代備前焼の礎となった金重陶陽ほどに努力している人が果して 幾人いるであろうか。
このたび多くの類書が刊行されているにもかかわらず『備前焼大鑑』を編集することになったが、編集にあたってから現代にいたる備前の陶芸の全貌をこの一冊に収めることを企てた。中世や桃山以後の近世の作品が日本の陶磁史のなかにあって重要な位置をしめていることは、既によ く知られているところであり、ことに桃山時代の茶陶には、その土の特色が存分に発揮された傑作が数々残され、時代全体の陶芸のかにあって主要な位置をしめていることは皆言を必要とし ない。ところが江戸時代藩制下に入ると、桃山の精気は次第に失なわれ、遂に細工物にその土を生 かすというような消極的を備前焼になってしまったが、金重陶陽の出現によって、再び備前焼に桃 山の息吹がかまいだし、そしてその条光が今日の備前焼を支えているといっても過言ではない。
しかし陶陽の仕事は、基本的には桃山風の茶陶備前焼の再興を目的としていた。それは大きな功績で あったが、現代は現代なりにまたちがった形の探究が、より一層活発に行なわれてしかるべきと思われるのであり、そうした備前焼の新たなる展開を願って、藤原啓、山本陶秀、金重素山、藤原 建などすでに一風をものした人々の他に、五十二人の作陶家の作品も併せて収録した次第である。 本書の編集に際し、すでに知られた名作はもちろん未紹介の作品の収録にもつとめたが、それらの作品の撮影にあたって大いに御協力いただいた所蔵家、作陶家、古美術商各位に深く謝意を表す次第である。
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